SONYのサウンドバー、その頂点に君臨する最新フラッグシップモデル「BRAVIA Theatre Bar 9 (HT-A9000)」。
メーカー公式サイトには「13個のスピーカーユニット」「360 Spatial Sound Mapping」といった美辞麗句が並びます。しかし、私が信頼する評価機関RTINGS.comの技術解析は、その中身を冷静に見抜いています。
The BRAVIA Theater Bar 9 uses four of its drivers in two pairs. So, it effectively operates like a 5.0.2 soundbar… BRAVIA Theater Bar 9は、4つのドライバーを2つのペアとして使用しています。そのため、実質的には「5.0.2ch」のサウンドバーとして動作します… (引用: RTINGS.com)
つまり、スピーカーの「数」だけを見て「13ch分の音が降ってくる」と期待してはいけません。20年間ホームシアターを見てきた私の結論をお伝えします。
この製品は、「単体」で完成する魔法の杖ではありません。
もしあなたが「サウンドバー一本で、映画館のような重低音と包囲感を」と期待しているなら、この投資は「失敗」に終わる可能性が高いでしょう。
しかし、絶望する必要はありません。このサウンドバーの真価は、別のところにあります。今回は、データを元にHT-A9000の「単体」としての実力を裸にし、「どのような人が買うべきか」「どうすれば真の姿になるのか」を、包み隠さず解説します。
SONY BRAVIA Theatre Bar 9 (HT-A9000)
「将来的にサブウーファーを追加する」という覚悟がある方にとっての、最強のベース基地です。単体利用はお勧めしません。
- 単体評価は厳しい: RTINGSの映画評価は「6.7点」。フラッグシップとしては衝撃的な低評価です。最大の弱点は「低音の欠如」と「サラウンドの焦点の甘さ」。
- ゲーマーは要注意: HDMIの遅延(レイテンシー)が大きく、シビアなゲームには向きません。
- それでも選ぶ理由: 「4K 120Hzパススルー」が必要なPS5/PCゲーマー(※RPG等)、そして将来的にSONY純正サブウーファー・リアスピーカーを追加して「完成形」を目指す人にとっては、他に代えがたい選択肢となります。
▼「完成形(セット)」の評価を知りたい方はこちら

実勢価格はハイエンドクラス。しかし、5年使うと考えれば、1日あたりのコストは缶コーヒー1〜2本分です。この投資を「未完成」で終わらせるか、「極上の体験」に変えるかは、あなたの「組み合わせ」次第です。
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RTINGS評価が暴く「Movies 6.7」の衝撃
私が信頼する米国の評価機関「RTINGS.com」が下したHT-A9000(単体)の評価は、多くのSONYファンを動揺させるものでした。
▼ Sony BRAVIA Theater Bar 9 Soundbar Review
The Sony BRAVIA Theater Bar 9 is decent for mixed use… Since it lacks a subwoofer and satellites, Dolby Atmos-mixed content, like movies, feels a bit less dimensional, while the audio itself lacks low bass. Its soundstage doesn’t feel very focused either…
(私たちの評決:7.0 複合用途)
Sony BRAVIA Theater Bar 9は複合用途ではまずまずです…。しかし、サブウーファーとサテライト(リアスピーカー)がないため、映画のようなDolby Atmosコンテンツは立体的さに欠け、オーディオ自体も低音が不足しています。音場もあまり焦点が定まっていません…
出典:RTINGS.com | Sony BRAVIA Theater Bar 9 Soundbar Review
特に衝撃的なのは、サウンドバーの主戦場である「Movies(映画)」のスコアが「6.7点」に留まったことです。これは、数万円台のミドルクラス製品と大差ない、あるいは下回ることもあるスコアです。
なぜ、フラッグシップがこれほど苦戦したのでしょうか?RTINGSのデータから、その理由を紐解きます。
決定的な「低音不足」
最大の要因は、物理的なサブウーファーの不在です。
Even though the bar has integrated woofers (not quite subwoofers), they can’t quite reproduce thumpy low bass, especially when compared to bars with a dedicated subwoofer…
バーにはウーファーが内蔵されていますが(サブウーファーとは呼べません)、専用サブウーファーを備えたバーと比較すると、ドスンとくる低い低音を再現することはできません…
(引用: RTINGS.com | Sony BRAVIA Theater Bar 9 Soundbar Review)
映画の爆発シーンやエンジンの唸り声など、没入感を決定づける「地響きのような低音」は、このスリムな筐体だけでは物理的に不可能です。どれだけデジタル処理で頑張っても、空気を震わせるパワーが足りないのです。
焦点が定まらないサラウンド感
もう一つの弱点は、包囲感(サラウンド)の質です。RTINGSは「5.1chサラウンド性能」について、以下のように厳しく評価しています。
5.1 Surround: 5.1 (Score)
The Sony A9000’s surround performance is disappointing. This bar has side-firing speakers to simulate surround sound, but this doesn’t sound as clear or real as a discrete setup.
(5.1chサラウンド:スコア 5.1)
HT-A9000のサラウンド性能は期待外れです。このバーはサイドファイアリングスピーカーを使ってサラウンドサウンドをシミュレートしますが、これは分離した(リア)スピーカーのセットアップほどクリアでもリアルでもありません。
(引用: RTINGS.com | Sony BRAVIA Theater Bar 9 Soundbar Review)
音を壁に反射させて擬似的に後ろから音を鳴らす技術は、部屋の形状や材質に大きく依存します。RTINGSのラボテストでは、音がどこから鳴っているか曖昧で、期待したほどの没入感が得られなかったという結果が出ています。
これが、メーカーの美辞麗句を剥ぎ取った、「単体」での残酷な現実です。
ゲーマーが直視すべき「遅延(レイテンシー)」の罠
40代の男性なら、PS5やXbox Series Xでゲームを楽しむ方も多いでしょう。HT-A9000は「4K 120Hzパススルー」や「VRR」に対応しており、スペック上はゲーマー向けに見えます。
しかし、ここにも大きな落とし穴があります。「音声の遅延」です。
RTINGS測定データ:HDMI遅延
Audio Latency: HDMI In
Dolby Digital: 148 ms
Dolby Digital Plus Atmos: 142 ms
(引用: RTINGS.com | Sony BRAVIA Theater Bar 9 Soundbar Review)
これは、ゲーム機をサウンドバーのHDMI入力に直接接続した場合の遅延データです。約0.14~0.15秒の遅延が発生します。
「0.15秒なんて分からないだろう」と思いましたか?
FPS(一人称視点シューティング)や音ゲー、格闘ゲームをプレイする人にとっては、これは致命的な数字です。ボタンを押してから銃声が鳴るまで、あるいはリズムに合わせてボタンを押すタイミングが、ワンテンポずれる感覚になります。これでは快適なプレイは望めません。
テレビ側のeARC経由で接続した場合も、状況は劇的には改善しません(Dolby Atmosで約137ms)。
結論として、シビアなタイミングが要求されるゲームをプレイする場合、このサウンドバー経由で音を出すことは推奨できません。ヘッドセットを使うか、遅延を許容できるRPGなどに用途を限定する必要があります。

それでも、HT-A9000を選ぶべき「唯一の理由」
ここまで酷評してきましたが、ではHT-A9000は「買ってはいけない製品」なのでしょうか?
いいえ、そうではありません。「目的と手段」が合致する人にとっては、唯一無二の選択肢になります。
RTINGSも、競合(Sonos Arc Ultraなど)と比較した際、本機の強みを明確に認めています。
1. 「4K 120Hzパススルー」という絶対的な強み
競合の雄「Sonos Arc Ultra」にはない決定的な機能、それがHDMI入力端子と「4K 120Hz / VRRパススルー」への対応です。
最新のゲーム機や高性能PCの映像スペックを劣化させずにテレビへ送りつつ、高音質な音声信号をサウンドバーで受け止める。これはSonosにはできません。
前述の通り遅延の問題はあるものの、「RPGやアドベンチャーゲーム中心で、とにかく最高画質・最高音質でプレイしたい」という層にとって、この機能は代えがたい魅力です。
2. 「Acoustic Center Sync」への期待(過信は禁物)
対応するSONY BRAVIAテレビと接続することで、テレビのスピーカーをセンタースピーカーとして併用する「Acoustic Center Sync」。
画面から直接セリフが聞こえてくるような定位感は、SONY純正の組み合わせならではのメリットです。
しかし、RTINGSの評価は冷徹です。単に「効果が薄い」だけでなく、音質劣化のリスクすら指摘しています。
Don’t get your hopes up, though… in our experience, this feature doesn’t really improve your setup’s performance… Instead, it can make audio seem flatter. 過度な期待はしないでください… 私たちの経験では、この機能はセットアップのパフォーマンスをそれほど向上させません… むしろ、オーディオが平坦(フラット)に聞こえる可能性があります。 (引用: RTINGS.com | Sony BRAVIA Theater Bar 9 Soundbar Review)
テレビ内蔵スピーカーとサウンドバーでは、音の「質」や「厚み」が異なります。無理に混ぜることで、バー本来の高品質な音が濁ってしまう現象です。
「純正だから必ず良くなる」という盲信は捨て、実際に聴いてみて違和感があればOFFにする。その程度の「おまけ機能」として捉えておくのが賢明です。
3. 「完成形」への拡張性という希望
これが最も重要です。HT-A9000は、単体では「未完成」ですが、オプションスピーカーを追加することで、評価は一変します。
RTINGSも、レビューの中で繰り返し「サブウーファーとサテライトがあれば、もっと良くなる」と示唆しています。
つまり、HT-A9000を買うということは、「将来的に最強のSONYシアターシステムを構築するための、高性能なセンターユニットを買う」という投資なのです。
【プロの比較】ライバル機種との決定的差
では、具体的にライバルや旧機種と比べてどうなのか。RTINGSの評価を元に比較します。
| 特徴 | SONY HT-A9000 (単体) | Sonos Arc Ultra (単体) |
| RTINGS総合評価 | 7.0 (Mixed) | 7.7 (Mixed) |
| 映画評価 | 6.7 (Movies) | 7.3 (Movies) |
| セリフの明瞭さ | 7.5 (Dialogue) | 8.1 (Dialogue) |
| 低音の迫力 | △ (不足) | △ (不足) |
| HDMI入力 | あり (4K120Hz) | なし (eARCのみ) |
| 拡張性 | ◎ (専用SW/リア) | ◎ (専用SW/リア) |
| 寸評 | 拡張前提の未完成品。4K120Hz必須なら。 | 単体性能は最強クラス。HDMI入力不要ならこれ。 |
| 価格チェック |
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結論: 「単体で完結させたい」ならSonos Arc Ultraの方が満足度は高いでしょう。しかし、「SONYのテレビと合わせたい」「4K120Hzのゲーム機を繋ぎたい」「将来的にリアル5.1.2chに拡張したい」という明確な目的があるなら、HT-A9000を選ぶべきです。
安くはない投資です。妥協して後悔するより、ご自身の環境に最適な一台を選んでください。
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【最重要】HT-A9000を「完成形」にするための必須アイテム
ここまで読んで、「よし、HT-A9000にしよう」と決めたあなた。もう一つだけ、重要なアドバイスがあります。
このサウンドバーのポテンシャルを「単体」で腐らせないでください。
RTINGSの低評価を覆し、真の「映画館体験」を手に入れるためには、以下の拡張が不可欠です。これらを揃えて初めて、この製品は完成します。
なぜ「単体」ではダメなのか、その根本的な理由を知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

0. 【絶対必須】48Gbps対応 HDMIケーブル
HT-A9000の強みである「4K 120Hzパススルー」や「eARC」を正常に機能させるには、「Ultra High Speed」認証を受けたHDMIケーブルが必須です。PS5付属のケーブルと同等以上のスペックがないと、映像が映らない、音が途切れるといったトラブルになります。
「家にある余ったケーブル」で済ませようとするのが、最も多い失敗原因です。投資を無駄にしないよう、必ず新品を用意してください。
1. 魂を吹き込む「サブウーファー」(優先度:高)
映画の迫力、ゲームの没入感。その8割は低音が支配していると言っても過言ではありません。HT-A9000の最大の弱点を補うのが、専用ワイヤレスサブウーファーです。
- SA-SW5(大出力モデル): 予算と設置スペースが許すなら、迷わずこちら。地響きのような重低音で、部屋の空気が変わります。一軒家や防音環境のあるマンション向け。
- SA-SW3(コンパクトモデル): マンションのリビングなど、近隣への配慮が必要な場合はこちら。サイズはコンパクトですが、単体とは比較にならない厚みのある低音を追加できます。
「後で買おう」と思っていると、多くの場合タイミングを逃します。本体と同時購入が、最も賢い選択です。
2. 空間を支配する「リアスピーカー」(優先度:中)
「後ろから音が聞こえる」という感覚を、擬似的な反射ではなく、リアルな音として体験したいなら、リアスピーカーの追加が必要です。
- SA-RS5: バッテリー内蔵で完全ワイヤレス設置が可能(※電源ケーブル接続も可)。さらにイネーブルドスピーカーを搭載し、後方からの高さ方向の音も表現します。HT-A9000と組み合わせることで、真の「360立体音響」が完成します。
最後に、本機の性能を100%引き出すための「ソース(映像・音声データ)」についてお伝えします。
これだけのハイスペック機材を揃えて、YouTubeの圧縮された音源や、地上波放送だけを見ているのは、フェラーリで渋滞を走るようなものです。
「Dolby Atmos」や「4K HDR」本来の没入感は、適切なVODサービスを選んで初めて体験できます。40代が選ぶべきVODは、実はかなり限られています。

まとめ:「約束された未来」への賢い投資
SONY BRAVIA Theatre Bar 9 (HT-A9000)は、RTINGSの評価が示す通り、単体では「完璧」とは言えません。低音の迫力不足、サラウンドの甘さ、そしてゲーマー泣かせの遅延という課題を抱えています。
しかし、それを理解した上で手にするならば、これほど頼もしい「ベース基地」はありません。
- SONY BRAVIAとの親和性
- 貴重な4K 120Hzパススルー対応
- 拡張によって化ける「約束された高性能」
これらが、あなたがこの製品を選ぶべき理由です。
決して安い買い物ではありません。しかし、これから5年、10年と続くあなたのホームシアターライフの中心に、この漆黒のバーが鎮座し、サブウーファーやリアスピーカーが加わっていく様を想像してみてください。それは、単なる浪費ではなく、生活の質を高める「賢い投資」になるはずです。
さあ、まずはその第一歩を、ここから始めましょう。
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