「SONYの最新モデルなら、とりあえず間違いないですよね?」
私の元には、このような相談が毎日のように届きます。特に、先代の「X90L」が非常にバランスの良い名機だったため、その後継機とされる「BRAVIA 5 (K-XR50)」への期待値は非常に高いものがあります。
しかし、20年以上の経験から申し上げます。
「最新が常に進化しているとは限らない」というのが、家電選びの恐ろしいところです。
結論から言いましょう。
もしあなたが「FPSなどの激しいゲーム」や「部屋を暗くして没入する映画体験」を最優先にするなら、このBRAVIA 5については少し慎重になる必要があります。
一方で、「リビングで地デジやYouTubeを家族と快適に見たい」という用途なら、このテレビは極めて優秀な選択肢になります。
なぜ、評価がこれほど分かれるのか?
今回も、私の主観ではなく、世界で最も信頼できる検証機関「RTINGS.com」の客観的データを翻訳しながら、カタログには載っていない「BRAVIA 5の真実」を紐解いていきましょう。私がランキングを書かない理由
- ここが注意(沼): ゲーム性能(特に応答速度)が低い。 RTINGS評価「Gaming 6.7」は、PS5の性能をフルに引き出したい人には厳しい数値。速い動きで「残像(ブラー)」を感じやすい。
- ここが優秀: 日常使い(地デジ・配信)は非常に快適。 SONY独自のXRプロセッサーによるアップスケーリングは流石の一言。Mini LED搭載で色も鮮やか。
- X90Lとの比較: 残念ながら、輝度(明るさ)などは先代X90Lの方が優秀な項目が多い。「後継機」というより「コストダウン版」の側面が見え隠れする。
- 例外: 「98インチ」だけは別格。 コントラスト性能が大幅に良く、別モデルのような高評価。超大型狙いならアリ。
- 結論: ゲーマーは回避推奨。リビングのメインTVとしては「価格次第」でアリだが、有機ELを検討すべき。
BRAVIA 5 (XR50) の正体:RTINGSスコアが示す「得意・不得意」
まずは、RTINGS.comが叩き出したスコアを見てみましょう。この数字が、BRAVIA 5の性格を雄弁に物語っています。私がRTINGS.comのデータだけを信じる理由
▼ Sony BRAVIA 5 TV Review
- Mixed Usage: 7.2
- Home Theater: 7.2
- Gaming: 6.7
- Bright Room: 7.5
出典:RTINGS.com | Sony BRAVIA 5 TV Review
まず、最も衝撃的なデータからお話しなければなりません。
あなたがもし、仕事終わりの貴重な時間にPS5やXboxで『Apex Legends』や『Call of Duty』、あるいは動きの激しいアクションゲームを楽しみたいと考えているなら、BRAVIA 5は最適解ではありません。
あれ? SONYのテレビって「PlayStation 5に最適」ってCMしてませんでしたっけ? ゲームのスコア「6.7」って低くないですか?
ナオキ鋭いですね。まさにそこが、今回の最大の注意点なんです。
衝撃の「Gaming 6.7」
Gaming: 6.7
The Sony BRAVIA 5 is just alright for gaming. (…) However, the TV has very slow pixel transitions, so fast motion is blurry and lacks clarity.(日本語訳:Sony BRAVIA 5のゲーミング性能は「まあまあ」です。…しかし、このテレビはピクセルの遷移が非常に遅いため、速い動きはぼやけ、鮮明さに欠けます。)



スコア「6.7」。これは近年のSONY製ミドルレンジテレビとしては、はっきり言って低い数字です
原因は「応答速度(Response Time)」にあります。
入力遅延(コントローラーを押してから反応するまでの時間)は優秀なのですが、画面の色が切り替わる速度(Pixel Response)が遅いのです。
これが何を意味するか?
視点を素早く動かしたときに、背景が流れるようにボヤける(モーションブラーが発生する)ということです。FPSで敵を視認するのが遅れたり、長時間プレイしていると目が疲れやすくなったりする原因になります。
「SONYだからPS5との相性は最高のはず」
この思い込みは、BRAVIA 5に関しては捨ててください。ゲームの没入感を最優先するなら、この投資は「失敗」になります。PS5の性能を120%引き出すテレビ選びの条件
映画ファンが知っておくべき「コントラスト」の真実
次に、ホームシアターの主役として映画を楽しむ場合です。
BRAVIA 5は「Mini LED」を採用しています。従来のLEDよりも細かく光を制御できるため、理論上は「黒が締まる」はずです。
しかし、ここにも落とし穴があります。
ゾーン数は増えたが、制御が「守り」に入っている
Lighting Zone Precision: 7.5
Even though it has more dimming zones than the Sony X90L/X90CL, there’s a large averaging of zones, so it isn’t very precise with small highlights. This means that it often falls back to its native contrast ratio, especially during more challenging scenes.(日本語訳:X90Lよりも多くの調光ゾーンを持っていますが、ゾーンの平均化が大きく行われています。そのため、小さなハイライトに対してあまり正確ではありません。これは、特に難しいシーンでは、ネイティブのコントラスト比に戻ってしまうことが多いことを意味します。)



これは非常に興味深い、プロならではの指摘です。
簡単に言うと、「光漏れ(ブルーミング)を嫌うあまり、明るくすべきところをあえて暗めに抑えている」のです。
星空のようなシーンで、星がキラッと輝くのではなく、全体的に少しモヤッと眠たい画になってしまう可能性があります。「暗い部屋で映画の世界に没頭したい」という40代のニーズに対しては、少し物足りなさを感じるでしょう。
もしあなたが「夜、部屋の明かりを落として映画を見る」のが好きなら、BRAVIA 5よりも、型落ちの「X90L」の方がパンチのある画を出していた(RTINGS比較でもX90Lの方が明るいとされています)し、もっと言えば「有機EL(OLED)」を選ぶべきです。なぜ40代には有機EL一択なのか?
視野角と反射の問題
もう一つ、リビングでの使用で気になるのが「反射」と「視野角」です。
- Reflection(反射処理): 5.8
- Viewing Angle(視野角): 6.7
窓の反対側にテレビを置く場合、昼間は映り込みが気になるレベルです。また、キッチンから斜めに見ると色が薄くなる(白っぽくなる)傾向があります。ワイドなリビングで大人数で見る場合は注意が必要です。
それでもBRAVIA 5が「買い」なのは誰か?
ここまで厳しいことを言いましたが、BRAVIA 5が「ダメなテレビ」というわけではありません。
むしろ、特定の用途においては非常に優秀な優等生です。
1. 「地デジ・バラエティ」中心のリビング派
RTINGSの評価でも、低解像度コンテンツのアップスケーリング(Processing)は非常に高く評価されています。
Upscaling: Sharpness Processing: 9.0
The Sony BRAVIA 5 has superb sharpness processing capabilities.
(Sony BRAVIA 5は素晴らしいシャープネス処理能力を持っています。)
日本の地デジ放送や、画質の荒いYouTube動画を再生したとき、BRAVIA 5は魔法のようにノイズを消し、綺麗に見せてくれます。これは海外メーカー(TCLやHisense)がまだ追いつけない、SONYの映像プロセッサ「XR」の独壇場です。
「画質マニアではないけれど、いつものテレビ番組を綺麗に見たい」
「家族みんなで明るい部屋で使うのがメイン」
こういった用途なら、BRAVIA 5は非常に安定した選択肢となります。色味も箱出し状態で非常に正確(Pre-Calibration Color Accuracy: 7.8)なので、細かい設定なしで綺麗な色が楽しめます。
2. 「98インチ」の超大型を狙う猛者
ここが最大のポイントです。
実は、BRAVIA 5は「65インチモデル」と「98インチモデル」で中身の性能傾向が異なります。
え?同じ機種名なのに性能が違うの?



そうなんです。パネルの製造元や特性が違うことがよくあります。
RTINGSのレビュー内でも明確に言及されています。
Differences Between Sizes And Variants
The 98-inch model performs differently, with better contrast and overall brightness…
(98インチモデルは性能が異なり、コントラストと全体的な輝度がより優れています…)
もしあなたが、富豪の遊びとも言える「98インチの超大型導入」を検討しているなら、話は別です。このサイズにおけるBRAVIA 5はコントラスト性能が高く、別格の評価を得ています。この場合、BRAVIA 5は「買い」の候補に急浮上します。
結論:40代の「賢い投資」の正解は?
まとめましょう。2025年、あなたの貴重なボーナスをどこに投じるべきか。
ゲーマー・映画ファンなら:他を当たりなさい
厳しいようですが、「BRAVIA 5」はスルー推奨です。
同じ予算、あるいは少し足してでも、以下の選択肢を検討してください。テレビだけに予算を全振りしてはいけない理由
- SONY A95L / LG C5 (有機EL)
- 圧倒的な黒の締まり、応答速度0.1ms以下のクリアな動き。没入感は段違いです。「沼」を回避し、一発でゴールに到達したいならこれです。LG C5が賢い投資である理由
- SONY X90L (型落ち液晶)
- もし在庫が見つかるなら、前モデルのX90Lの方がHDRの輝度が高く、パンチのある画が出ます。価格もこなれているはずです。
「SONYの安心感」で日常使いするなら:BRAVIA 5で正解
- ゲームはたまにSwitchをやる程度。
- 基本はリビングでニュースやバラエティを見る。
- 海外メーカーの操作性や品質には不安がある。
この条件なら、BRAVIA 5は「長く使える信頼のパートナー」になります。Google TVの動作もサクサクで、地デジの画質は一級品です。
あなたが求めているのは「究極の没入感」ですか?それとも「日常の快適さ」ですか?
その答えに合わせて、賢い選択をしてくださいね。
▼地デジも配信も美しく。日常使いの最適解「BRAVIA 5」
まとめ:用途を間違えなければ、悪いテレビではない
BRAVIA 5は、「万能選手」のように見えて、実は「日常使い特化型」のテレビです。
- 回避すべき人: 没入感を求めるゲーマー、部屋を暗くする映画ファン。
- 買うべき人: 地デジを綺麗に見たい人、明るいリビングで家族と使う人、98インチを検討する人。
巷のランキングや店員さんの「最新だから良いですよ」という言葉だけで決めず、「自分のライフスタイルに合うか」で判断してください。そうすれば、決して後悔することはありません。
あなたのシアターライフが、賢い選択でより豊かになることを願っています。
▼日常使いには最高の相棒。SONY BRAVIA 5

