「SONYの最新有機ELなら、とりあえず買っておけば間違いない」
もしあなたがそう考えているなら、少しだけ立ち止まってください。
確かにBRAVIA 8 (XR80) は素晴らしいテレビです。しかし、20年以上の経験から断言しますが、「思考停止で選ぶ」ことほど、ホームシアター構築において危険なことはありません。
特に有機ELテレビへの投資は、40代にとって決して安くない買い物です。「期待していたより画面が暗い」「昼間は映り込みが激しくて見えない」……そんな後悔をしてほしくないのです。
この記事では、私の主観や「なんとなく綺麗」といった感想は一切排除します。
世界で最も信頼できるガジェット評価サイト「RTINGS.com」の客観的な測定データ(Fact)を基に、BRAVIA 8があなたの視聴環境にとって「正解」なのか、それとも「LG C5」を選ぶべきなのか、白黒はっきりつけます。RTINGS.com」のスコアの信頼性について
- 映画ファン(Home Theater 8.2): 推奨。完全な暗室や夜間の視聴なら、SONY独自のプロセッサが作る「没入感」は最強クラス。
- ゲーマー(Gaming 8.4): 推奨。PS5との親和性、応答速度、VRR対応は完璧。
- 明るいリビング派(Bright Room 7.0): 非推奨。 映り込み処理と最大輝度はLG C5に劣るため、日中の視聴が多いなら遮光対策が必須。
- コスパ重視派: RTINGSデータ上は、より安価で高性能な「LG C5」が合理的。それでもSONYを選ぶ価値は「画像処理エンジンXR」にあり。
結論:BRAVIA 8は「夜、映画とゲームに没頭するための大人専用機」です。
総合評価:映画とゲームに特化した「夜の帝王」
まずは、RTINGS.comによる総合評価を見てみましょう。これが、世界基準の客観的な評価です。
▼ Sony BRAVIA 8 OLED TV Review
- Mixed Usage: 7.9
- Home Theater: 8.2
- Gaming: 8.4
- Bright Room: 7.0
あれ? 「Mixed Usage(複合用途)」が7.9点って、最新機種にしては少し低くないですか?
ナオキ鋭いですね。実はそこが最大のポイントです。このスコアの凹凸こそが、このテレビの性格を如実に表しています。
詳しく見ていきましょう。
- Home Theater (8.2): 非常に高い評価です。部屋を暗くして映画を見る用途には最適解の一つです。
- Gaming (8.4): これも高得点。PS5などの次世代ゲーム機との相性は抜群です。
- Bright Room (7.0): ここが弱点です。 明るい部屋での視聴性能は、競合他社に比べて明らかに劣ります。
つまり、BRAVIA 8は「リビングでニュースもバラエティも見る万能テレビ」というよりは、「照明を落としてコンテンツに没入するためのシアター専用機」という性格が強いのです。
なぜ「Home Theater」スコアが8.2なのか?
ホームシアターにおいて最も重要なのは「コントラスト(明暗差)」です。RTINGSの測定データは、有機ELならではの「無限」のコントラスト比を示しています。
[データ引用提案:RTINGS.comの「Contrast」項目の数値(Inf : 1)と、「Native Black Uniformity」の画像を引用する。
▼ Contrast: Inf : 1
Native Black Uniformity: Perfect
数値が示す通り、黒は完全に「無(ゼロ)」です。夜景のシーンや宇宙空間のシーンで、液晶テレビのような「黒浮き(バックライト漏れ)」は一切発生しません。これが8.2点という高評価の根幹です。
さらに、SONYの真骨頂であるプロセッサー「XR」による画像処理が加わります。RTINGSのデータでは「Low-Quality Content Smoothing(低画質コンテンツの平滑化)」で8.4点、「Upscaling(アップスケーリング)」で8.5点を記録しています。
これは、Blu-rayや4K配信だけでなく、YouTubeや地デジのような画質の悪い映像も、驚くほど滑らかでノイズのない映像に変換してくれることを意味します。これが、数値スペックだけではLGに劣る部分があっても、SONYが選ばれる理由です。液晶モデルBRAVIA 7 (XR70) との比較はこちら
ゲーマー歓喜の「Gaming 8.4」:PS5の真価を引き出す
私たち40代にとって、ゲームは最高のストレス解消法ですよね。BRAVIA 8は、大人のゲーミングモニターとしても極めて優秀です。
応答速度と入力遅延の真実
RTINGSの測定データを見てください。
1080p @ 120Hz: 5.2 ms
4k @ 120Hz: 5.1 ms
Response Time (Total): 4.3 ms
出典:RTINGS.com | Sony BRAVIA 8 OLED TV Review
- 入力遅延 5.1ms: コントローラーのボタンを押してから画面が反応するまでの時間が、人間の知覚限界を超えて速いです。FPSや格闘ゲームでも言い訳できません。
- 応答速度: 有機EL特有の瞬時のピクセル切り替えにより、速い動きでも残像感がほぼありません。
さらに、VRR(可変リフレッシュレート)にも対応しており、ゲーム側の処理落ちによる画面の「カクつき」や「チラつき」を防ぎます。当然、PS5との連携機能(オートHDRトーンマッピングなど)は完璧です。PS5の性能を100%引き出す設定手順
隠してはいけない弱点:「Bright Room 7.0」の意味
ここまで褒めてきましたが、プロとしてここからが一番重要な話です。
もしあなたの視聴環境が「日当たり良好なリビング」で、「昼間もカーテンを開けてテレビを見る」スタイルなら、BRAVIA 8は失敗する可能性が高いです。
1. 輝度(明るさ)不足
RTINGSの「HDR Brightness」の測定値を見てみましょう。
Peak 2% Window: 923 cd/m²
Sustained 100% Window: 155 cd/m²
出典:RTINGS.com | Sony BRAVIA 8 OLED TV Review
ピーク輝度923 cd/m²は暗い部屋では十分すぎるほど眩しいですが、問題は「Sustained 100% Window(画面全体が白い時)」の155 cd/m²です。これは、雪山や日中のビーチのようなシーンで、画面全体がかなり暗く抑えられてしまうことを意味します(ABL制御と言います)。
2. 映り込み処理の限界
さらに厳しいのが「Reflections(反射)」の評価です。
RTINGSは「Direct reflections are distracting(直接的な反射は気が散る)」と指摘しており、スコアも6.4点(Direct Reflections)と低めです。



つまり、画面が暗いシーンで、自分の顔や背後の窓が鏡のように映り込んでしまうリスクが高いのです。
えっ、それは困ります。どうすればいいんですか?



解決策はシンプルです。「遮光カーテン」を使うこと。これに尽きます。BRAVIA 8を選ぶなら、環境側をテレビに合わせる覚悟が必要です。環境構築でテレビの性能を120%引き出す方法
禁断の比較:vs LG C5 OLED
ここで、多くの人が迷うであろう競合機種「LG C5」との比較を、RTINGSのデータに基づいて行います。
RTINGS.comの結論:
“The LG C5 OLED is better than the Sony BRAVIA 8 OLED.”
(LG C5の方が、Sony BRAVIA 8よりも優れている)
衝撃的かもしれませんが、これがデータの示す事実です。
| 項目 | SONY BRAVIA 8 (XR80) | LG C5 | ナオキの視点 |
|---|---|---|---|
| パネル | WOLED | WOLED (より高輝度) | LGの方が基礎体力(明るさ)が上 |
| Mixed Usage | 7.9 | 8.6 | 普段使いならLGが有利 |
| Home Theater | 8.2 | 8.8 | |
| Gaming | 8.4 | 8.8 | LGはHDMIポート全てが2.1対応(SONYは2つのみ) |
| Bright Room | 7.0 | 7.7 | |
| 画像処理 | XRプロセッサー | α9 AIプロセッサー | 低画質ソースの処理はSONYに一日の長あり |
| スタンド | 調整可能 (サウンドバー対応) | 固定が多い | SONYのスタンドはサウンドバー設置に配慮されており優秀 |
私が40代にアドバイスするなら:
- 「LG C5」を選ぶべき人: コスパ重視、PCモニターとしても使いたい(144Hz対応)、昼間の視聴が多い、HDMI 2.1ポートが3つ以上必要。
- 「SONY BRAVIA 8」を選ぶべき人: 地デジやYouTubeもよく見る(アップスケーリング重視)、PlayStationのエコシステムが好き、SONY製サウンドバーと連携させたい、デザインが好き。
数値スペックではLGが上ですが、「画作り(色のチューニング)」や「モーション処理」の自然さにおいて、SONYには数値化できない「色気」があるのも事実です。LG C5の詳細レビューはこちら
音質の真実:サウンドバーは「必須」です
RTINGSの「Sound Quality」スコアは7.1。「Frequency Response(周波数特性)」を見ると、低音域(Low-Frequency Extension)が84.76 Hzまでしか伸びていません。
Low-Frequency Extension: 84.76 Hz
出典:RTINGS.com | Sony BRAVIA 8 OLED TV Review
これは映画の爆発音やエンジンの重低音が「全く鳴らない」ことを意味します。画面から音が出る「Acoustic Surface Audio+」は、セリフの定位感(口から声が出る感覚)こそ素晴らしいですが、迫力不足は否めません。
「異次元の没入感」を得るには、最低でもサブウーファー付きのサウンドバーが必須です。SONY製サウンドバー(HT-A9M2など)なら、「アコースティックセンターシンク」機能でテレビをセンタースピーカーとして活用でき、弱点を補完し合えます。これがBRAVIAを選ぶ大きなメリットの一つです。BRAVIA 8に最適なサウンドバー『HT-A9M2(完成形)』のレビュー」
FAQ:BRAVIA 8についてよくある質問
まとめ:夜、自分だけの世界に浸るための「賢い投資」
SONY BRAVIA 8 (XR80) は、万人に受けるテレビではありません。明るさや反射処理では、競合に劣る部分があるという客観的事実は受け入れる必要があります。
しかし、「照明を落とした空間」でのパフォーマンスは本物です。
RTINGSスコア「Home Theater 8.2」「Gaming 8.4」が示す通り、映画の暗部階調の美しさ、ゲームへの没入感は、あなたの夜の時間を「異次元」へと格上げしてくれます。
- 遮光環境を作れる。
- 映画とゲームがメイン用途だ。
- 低画質な地デジやYouTubeも綺麗に見たい。
この条件に当てはまるなら、BRAVIA 8はあなたにとって「失敗しない」最高の一台になるでしょう。
▼今回紹介した製品
SONY BRAVIA 8 (XR80)


